シュークリームを200個発注すべきところ、発注ミスで2000個頼んでしまったことがあります。周りの優しさに救われた学生バイト時代の話。今週のお題「激レア体験」
良かったら笑ってください
一時期、twitterで「発注ミスで店内がプリンの山!助けてください!」なんてツイートをよく見かけましたよね。山のように積まれたプリンやおにぎり、ミルクティー、メロンパン…。様々なものが誤発注されては、山積みになっている写真が投稿されていました。
大学生時代、リツイートやトレンド画面で流れてくるツイートを、ずっと「なにこの量やばいw」と笑って見ていたのですが。それを笑えない日がやってきてしまいました。
バイト先でやらかしたのです。
200個頼んだつもりのシュークリームが、2000個届いてしまうという事件を。
twitterでは短文にまとめられてしまう発注ミスについて、その詳細な顛末を、今週のお題「激レア体験」として書いてみます。
※事実をそのまま書くと身バレしそうなので若干フェイク入れています※
はじめに
大学生の時、私はとある小売店でアルバイトをしていました。小さめのスーパーというか…まあそんな感じ。パン、飲み物、お菓子なんかを売っているお店。
店長以外はみなアルバイトという形態で、割と長く勤めていた私は学生バイトながら古参組。店長やバイトリーダーが不在のときは、発注や在庫管理も任されていました。とはいえ、在庫数はPOSシステムが把握していますし、基本は「1週間前と同じ量+天気・在庫数・祝日・イベントを勘案」くらいでしたが。
当日のはなし
さて、やらかしたのはとある繁忙期でした。
シュークリームが届いた日(=Xデー)は、私は昼からのシフトでした。シフトに入ると、なにやらシュークリームが30%引き。まあそれ自体はよくあることなので、「レジでシュークリームを割引するのを忘れないようにしないとなー」くらいしか思いませんでした。
しかし、売れても売れても補充されるシュークリーム。いくら繁忙日で在庫が多いとはいえ、あんなに補充する?ついさっきも、後輩の子が30個くらい並べてたよな??
極めつけは、別の商品を取りにバックヤードの冷蔵庫に入ったとき。所狭しと並べられ、冷蔵庫内を圧迫するシュークリームのケースの山。今地震が来たらケース崩落するんじゃない?ってほどの山。
…この量おかしくない?あれ、これって、もしかして…。
すでに胃がキリキリするなか、ちょうど通りがかったバイトリーダーに聞きました。「あの…私…シュークリームの発注数間違えました…?」
バイトリーダーは気まずそうに笑いながら「あー…気付いちゃった?」と答えてくれました。
前日のはなし
バイト先の発注は、2日後に届く商品を注文します。つまり、私がやらかしたのはXデーの前々日。
思い返せばXデー前日からちょっとおかしかったのです。同期バイトの子が発注書を綴ったファイルを、神妙な顔をしながらバイトリーダーに見せている場面を目撃しました。それを見たバイトリーダーは爆笑。2度見してもう一笑い。
最後に発注書を綴ったのは私だったため、すぐに「何かありましたか?」と聞いたものの、「いや、大丈夫。何でもない何でもない」と返されました。それにしては、その後バタバタしているバイトリーダーと店長。「私が何かミスったのかな…?」とは思いつつも、その日は何事もなく過ぎて行きました。
前々日のはなし
言い訳をするならば、前々日はめちゃくちゃ忙しかったのです。一番忙しい日に店長やバイトリーダーがフル稼働できるよう、その日は二人とも不在。とはいえ繁忙期でバタバタ、おまけに一緒にシフトに入っていたのは比較的新しく入った子たち。後輩たちにあれこれ指示を出しつつ接客し、閉店時間から閉め作業をし、シフト終了の22時に後輩たちへ「もう帰っていいよ~」とさようなら。
そこから発注作業をして、100件近い翌日の予約商品をチェックするため店内と冷蔵庫と冷凍庫を行き来。やっと終わった…と半泣きで一人退勤したのが24時。正直フラフラで限界でした。
…だからといって、発注を間違えていいわけでもありませんが。
(正直、いまでは「二十歳過ぎの時給870円学生バイトが、店一番の繁忙期の発注と予約商品の確認って大丈夫なのか…?」とも思いますけれども。)
当日のはなし、再び
さて、もう一度、シュークリームが届いたその日(=Xデー)に戻ります。
バイトリーダーに「(発注ミスに)気付いちゃった?」と言われた私は、ともかく平謝りしました。バイトリーダーは「大丈夫大丈夫。30%引きにしてかなり売れてるし、グループ店舗の店長さんに売り込んでてそっちでも売れてるから」と笑顔。
グループ店舗とは、うちの小売店を経営している会社の別業態の店舗のことです。例えば、カフェだの居酒屋だの手広くやっていたんですよね(詳しい業態はフェイク)。それらの店舗の各店長に「発注ミスをしてしまったので、買い取ってくれませんか?」と、うちの店長やエリアマネージャーが営業しているとのこと。…ひえぇ~。
通りがかった店長にも平謝りです。でも「あ~大丈夫ですよ。むしろ発注とか任せきりですみません」と逆に謝られる始末…。
謝ったあと、改めて発注書を見ました。シュークリーム10個入を、20ケース頼むべきところ、200ケース頼んでる…。ぜ、ゼロがいっこ多いよ…。
発注したのは10個入×200ケース=2000個。時系列的には、ここでやっと実際に頼んだ個数を知りました。さあっと血の気が引く音がしました…。
繁忙期なのでその後は売り場に戻りましたが、ずっと心臓がバクバク、胃がキリキリしていました。くらくらするけど客足は途絶えない…せめてこれ以上ミスしないようにと必死でした。その間も視界の端で品出しされ続けるシュークリーム…。
接客をしながら「もし売れ残ったときは一部私が買い取ろう。他のバイトとか、家族とか、大学の友人に配ろう」という決意を固めました。1000個とかは配り先がないですが、100個くらいなら頑張れるはず。値段も1万円くらいだし…と。
で、閉店後に財布を持って、その意思を伝えたのですが「その必要はないよ!本当に売れたから!30%引きで今日だけでもめっちゃ売れたし、明日も売れるし!グループ店舗の人も買ってくれてるし!大丈夫だから!!」とめっちゃ止められました。
結果として、販売期限が翌日までのシュークリームは、廃棄になりませんでした。本当に売れました。原価ギリギリで儲けにならない30%引きという価格、店長の営業と買い取って下さったグループ店舗の各店長様のおかげです。本当に本当に良かった…。
そして、大きなことがもうひとつ。発注ミスをして迷惑をかけまくったのに、誰にも責められませんでした。
周りの人のはなし
発注ミスを知った瞬間から、誰にも責められませんでした。
バイトリーダーに「私発注ミスしました?」と聞いた時も、回答は「…気付いちゃった?」。そう、私が発注ミスしたことに気付かないように、皆さん気を遣って下さっていたんです。
例えば、前々日の発注書(=私がミスった発注書)を使う業務は、一切振られませんでした。2000個頼んだ発注書を見ないようにだと思います。
また、店頭への品出しは、品出しシフト+フリーシフトが担当するのですが、私はそれらのシフトに入りませんでした(当時よくフリーシフトを担当していたのですが)。そのためシュークリームを品出しする機会がなく、シュークリームが多すぎることにしばらく気付きませんでした。
さらに、他のバイト店員たちに「私…シュークリームを2000個頼んじゃったんですよね…」と告白すると、半分くらいは「あ~そうらしいね。でもとうつきさんには言わないでって言われていたから黙ってた」という返事でした。
…もう、その心遣いに泣けましたよね(;_;)
シュークリームが届く日にシフトが無いならともかく、シフトに入っているのに「発注ミスを知らせたら気に病むだろうからできるだけ隠そう」なんて…。本当に本当に、優しい対応でした。ありがとうございました。
教訓
この出来事を通じて「今後の人生、私も他の人がミスをしたとき優しく対応しよう」と強く思いました。やらかした本人は、やらかしたことに気付いた時点で心臓バクバクです(一部心臓が強い人はいるかもしれませんが)。そこにミスしたことを責めても、事態は全く好転しません。ミスした人には「大丈夫だよ!」と言いながら、どうやったら挽回できるかを考える。それがミスした人の心を救いながら、事態を前に進めるベストな方法だと、身を持って感じました。
また「世の中には自分を助けてくれる人がたくさんいるんだ」という実感を持てました。これはバイト先の人たち云々ということではなく…。もともと「一人でなんとかしなきゃ!」と抱え込みがちな性格なのですが、自分が思っているより、周りの人たちは私のことを助けてくれるのかも、と思えました。
あ、「発注ミスで在庫過多のお店を見かけた時は、絶対協力しよう」とも思っています(笑)
おわりに
今でもバイトリーダーの「あー…気付いちゃった?」という言葉は鮮明に思い出せます。それでも胃が痛い黒歴史ではなく、懐かしい笑い話として思い出せるのは、ひとえにバイト先の皆さんのおかげでした。
「激レア体験」とのお題を見た時、この出来事がぱっと思い浮かんだので思わず書いてしまいました。変化の少ないステイホーム週間、ちょっと笑ってもらえたら嬉しいです。
アイキャッチ画像:フリー写真素材ぱくたそ